土足禁止の時代があった

20年くらい前には土足禁止にしている車、土禁車が結構たくさんあって、駐車場などに靴が揃って置かれていることもよくあった。靴を脱いで車に乗り、そのまま忘れて走り去ってしまうのだ。靴だけがきちんと揃ってポツンと置かれているのはシュールな光景だし、その経緯が想像できるだけになかなか面白い。

車に乗る度にいちいち靴を脱ぐのは面倒だけど、土禁車にはそれなりの快適感もあった。靴を脱ぐということは家に上がるのと同じだ。車が単なる乗り物ではなくひとつの部屋という感覚である。動かすばかりでなく、駐車場に止めてそこでお気に入りの音楽をかけて飲食などもしたりする。空調も効いて個人的な快適な空間なのだ。靴を脱いでいるのでリラックス感も高い。駐車場デートなどもよくあったし、また旅行などで長距離を移動する場合も楽なのだ。

とはいっても運転手は何かと乗り降りが多いから、助手席側だけ土禁というのもあった。女子だけでもリラックスできるようにというものである。土禁がいいという女子は結構多かったのだ。靴をシートの下に置いておくためのトレーなどもカー用品店にたくさん売っていた。当時、土禁車は一定の市民権を得ていたのだ。

今は土禁車を見かけないし、そういう話も全然聞かない。もう絶滅した過去の習慣ということなのかもしれない。

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