ファーザー

認知症の年老いた父親を描いた作品である。猜疑心のかたまりになり、周りの人間を皆疑う。自分のものを取られた、失くなっていると言い出す。自分の居るところもわからなくなっていて、娘夫婦の家にいるのに自分の家だと言い張る。そもそも娘夫婦が誰だかわからなくなったりする。

介護士の挙動を疑い、物を盗むと言ったり暴言を投げつけたりするので、介護士も長続きせず何度も替わる。誰も信じられず、いつも不安である。ここはどこだ、あれは誰だと考え続ける。そして最後には子供に返ってしまいママを呼ぶのである。これを明晰な頭脳を持つ役が多いアンソニー・ホプキンスが演じるのだから、余計にこたえる。

親の介護をしている身としては恐ろしい内容だ。うちはまだ足が悪くてうまく歩けないくらいだけど、干してある洗濯物が誰かに取られたとか言ったりするから、怪しい気配はある。この映画は、あまり直視したくないような現実を描いた内容なのである。

監督:フロリアン・ゼレール

出演:アンソニー・ホプキンス、オリヴィア・コールマン、マーク・ゲイティス、ルーファス・シーウェル、イモージェン・ブーツ、オリヴィア・ウィリアムズ

2020年製作

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