菅野沖彦さんが亡くなった

オーディオ評論家の菅野沖彦さんが亡くなった。もう何年も体調が良くないようだった。オーディオ界の重鎮的存在だったと思う。オーディオに関する書籍も何点か出していて、また録音ディレクターとしての側面も持っている。

菅野さんの意見や評論は、主にオーディオ雑誌「ステレオサウンド」で読んだ。数百万円とか数千万円とか、普通の人からしたら非現実的な価格のオーディオ機器がズラッと紹介されている雑誌である。

レコード演奏家という概念を打ち出したのはこの人だ。楽器を演奏する人と同じように、オーディオによって独自の音世界を構成することも演奏と言えるのではないかということ。

安いオーディオはどれも同じような音だけど、「ステレオサウンド」に載っているようなオーディオ機器を使い、時間をかけて作り上げた音は、それぞれ独特の音世界を持っていて、レコード演奏家という概念もなるほど有りだなと思わせる。

自分も含めて、それなりの水準のオーディオを使いこなしている友人・知人の音を聴かせてもらうと、同じものはどれひとつとして無い。それぞれが「私の世界」を持っているのである。菅野さんの言うレコード演奏家なのだ。

毎年「ステレオサウンド」冬号では、その年のインパクトのあった機器をステレオサウンドグランプリとして選出していて、審査員は主にオーディオ評論家である。菅野さんはずっと審査員長だったが、体調を崩してからは審査員からもずっと外れていた。いつの日か復活するのではという期待もあったが、それはついに叶わなかった。

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