カミーユ・クローデルとロダン

「おそらくは、カミーユもロダンにピュグマリオンを見出し、自身がガラテアとなることを望んだに違いない」。これは先日読んだ西岡文彦「恋愛偏愛美術館」のカミーユ・クローデルについて書いた章の中の一節である。おそらく大半の人には一体何のことやらわからないと思われるが、美術愛好家は「ははあ、なるほど」と思うのではないか。

カミーユ・クローデルとロダンは彫刻家である。ロダンの「考える人」は有名だから知っている人も多いはずだ。カミーユはロダンに師事し、そして二人は愛し合うようになる。しかしロダンには妻がいる。やがて二人の関係は破綻してカミーユは精神を病み、30年もの間精神病院で過ごした後に亡くなる。

実はロダンよりもカミーユの方が才能があると見る向きもあって、現在では愛人というより共同制作者とされているようだ。ロダンはカミーユのアイデアや作風などを利用していて、専門家でもどちらの作品か見分けがつかないほどなのである。もっと評価されてもいい存在なのであるが、あまり作品を見ることもない。

ジェローム作「ピュグマリオンとガラテア」という絵画がある。ギリシャ神話に「ピュグマリオンとガラテア」という話があって、彫刻家のピュグマリオンが自身が作った彫像のガラテアに恋をするというもの。ピュグマリオンの祈りが実り、愛の女神アフロディーテによってガラテアの彫像に命が吹き込まれるのである。その場面を描いたのがジェロームの「ピュグマリオンとガラテア」。彫像が上半身からだんだん人になってきている。

冒頭の一節は、このジェロームの絵画になぞらえたものである。彫刻家の二人のなれそめを、彫刻と愛の画題にあてはめているのである。

なおイザベル・アジャーニ主演「カミーユ・クローデル」という映画があって、30年くらい前に見たのだけど、あまり面白くはなかった。重苦しくて長いという印象しかない。カミーユを演じるアジャーニは熱演だったが。

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