「ファンベックすずき」は「シュマンドール」に

群馬県の太田市に住んでいた頃、隣の桐生市にあるフレンチ・レストランによく行った。雰囲気が良くておいしいし、ワインも手頃な価格のものも用意されていた。ひげそり後が青々したソムリエがいつも応対してくれる。当時は「ファンベックすずき」という店名だったが、今は改装して「シュマンドール」となっているそうだ。

友人同士で、デートで、クリスマスでと、折にふれて行ったものだ。今から思えば、20代で結構贅沢していたなと思う。給料なんて全部使っちゃう勢いだった。太田市のレストランでもときどきフルコースを食べたりしていたが、やはり本命はファンベック。この店は今でも評価が高いらしい。

入社して数年の頃、同期だが高卒入社の連中がフルコースを食べに連れて行けという。そういうレストランに行ったことがないので、彼女ができたら連れて行きたいので練習したいというのだ。なかなかかわいいことを言うなと思うし、そりゃあ連れて行ってあげたいけど、5人も6人もにフルコースを食わせるほどこちらにも余裕はない。

でもそれはおごってくれというのではなくて、お金はちゃんと払うからとにかく体験したいと。引率してくれればいいのだということなので、総勢10人近くでファンベックすずきに行った。どうせなら敷居の高そうな店の方が度胸がついていいだろうと思って。

結構広めの華やかな店内で食事をするのは、初めてだとかなり緊張するかもしれないけど、そこは練習だからちょうどいいと思って行ったのだ。しかし思惑とは裏腹に、人数が多かったので個室に案内されてしまった。うっかりである。いつも数人で行っているから、そんな部屋があるとは知らなかった。せっかく広間で緊張を味わうはずだったのに、我々だけの個室だからみんなすっかりくつろいでしまったのだ。

初めてのフレンチ・フルコースということで、みんな大喜びではしゃぐ。テンションが高く少し賑やかだったから、個室で正解だったかもしれない。ソムリエと相談して試飲をしているときも、みんな興味津々だ。本当は相談も何も、一番安い方のワインを注文しているだけなのだけど。

思い出してみると、結構あれこれ思い出のある店なのだった。クリスマス・ディナーで食べたオマール海老のムースがもう一度食べたい。

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