大前研一「日本の論点」を読む

氏の主張するようにケインズ経済論もマクロ経済論も、現代のグローバル経済の元では機能せず、日銀の金融緩和政策も政府の財政出動政策も成果を上げられないということなら、GDP2%の達成は難しいし、アベノミクスも尻すぼみになる可能性大だ。

蓄えのある先進国では、マクロの経済政策よりも消費者や経営者の「心理」が経済を大きく動かすという「心理経済学」が有効であるということ。1500兆円もある個人金融資産の1%でも15兆円である。消費者の心理が改善して15兆円が使われれば、それだけでも政府の経済対策を上回る額が市場に出てくることになる。

この論点には確かに納得できる。実際、金融緩和も効果が出なくなっているし、アベノミクスも終焉を迎えつつある。ただ具体的に心理改善をどのように行うかが、なかなか難しいところだろう。

これは3年前の本で、震災後ずっと続いた貿易赤字が黒字に戻ることはなく、構造的な貿易赤字国になるだろうという予想は外れ。キャノンが一部の製品を国内で生産再開するなどしているので、円安になっても工場が国内に戻らないというのもちょっと外れ。でも読みやすいしなかなか面白い本である。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。