ジム・ジャームッシュ監督が作るゾンビ映画ということで、普通のゾンビ物ではないなとは思っていたが、こういうコメディだとはね。ジム・ジャームッシュは80年代に「ストレンジャー・ザン・パラダイス」「ダウン・バイ・ロー」という名作を作っている監督である。
平和な田舎町のダイナーで、ウエイトレスたちの腹を食い破られた死体が発見される。一体どうしてこんな事件が起こったのかと困惑する警官たちだが、その後続々とゾンビが現れて、町中ゾンビだらけになってしまうのだった。
事件前のダイナーでの何気ない場面。スティーブ・ブシェミとダニー・グローヴァー他が話している。こういう何気ない場面が一流監督の映画と三流監督の映画では全然違う。三流映画ではこういう場面が雑で実につまらないが、一流映画ではまったくそんなことはない。ちゃんと面白く見ていられる。
警察署で使っているのは珍しくウィンドウズパソコンである。映画やドラマではオシャレなマックを使うことが多いが、警察署だからウィンドウズパソコンの方が似合っているかも。
警察署の3人の警官はアダム・ドライヴァー、ビル・マーレイ、クロエ・セヴィニーとクセのある奴ばかり。いかにも何か起こりそうである。
葬儀屋の奥に畳敷きの道場みたいものがあり、ティルダ・スウィントンが柔道着のようなものを着て、刀を使って演舞した後に、立ち膝した金色の変な仏像に向かって「阿弥陀仏」と言い礼をする。
体のでかいアダム・ドライヴァーが、スマートというちっこい車で事件のあったダイナーに駆けつけるところがユーモラス。
次々にダイナーに来た人が、ウエイトレスの死体を見て野生動物にやられたのかと何度も聞くのは、漫才で言うところの”かぶせ”のようなものか。
なんだか飄々としたとぼけたゾンビ映画なのである。またアメリカ映画ではよくあるパターンだが、あちこちに他の映画のジョークも出てくる。
スターウォーズで主役級だったアダム・ドライヴァーは、本作と同じジム・ジャームッシュ監督の「パターソン」にも出ていて、コメディー的な作品も結構いけるようだ。
というわけで散漫な感想になってしまったが、こういう映画を真面目に論じても仕方ない。キャストは豪華である。
2019年製作
ビル・マーレイ、アダム・ドライヴァー、クロエ・セヴィニー、ティルダ・スウィントン、スティーブ・ブシェミ、ダニー・グローヴァー、トム・ウェイツ、イギー・ポップ、サラ・ドライヴァー、他出演。