スバルのアルシオーネVXが愛車だった

私がよく車に乗っていた頃はレガシィのツーリングワゴンの全盛期で、乗っている友人も非常に多かった。上位車種のGTは動力性能も高いし4WDだし荷物の積載能力も高いし、優れていることは理解している。それにその頃、動力性能の高いワゴンはスバルだけだったのである。

しかし私はその細長く感じるフォルムが嫌いで、といってレガシィのセダンにもあまり魅力を感じなかったので、アルシオーネに乗っていた。仕事の関係上スバル以外を買うことはできず、普通乗用車を買おうと思ったらレガシィかアルシオーネのどちらかを選ぶしかなかったのだ。

アルシオーネは2ドアクーペで、スペシャリティカーというジャンルの車である。ウェッジシェイプのクセの強い独特の外観で、未来的と評してくれる雑誌もあったが日本ではあまり売れず、主な市場は北米だった。室内インテリアも戦闘機のコックピットのような独特のもの。ATレバーなんて、ミサイルか何かの発射装置のようだ。今も無さそうだけど、当時2ドアクーペの4WD車というのはこのアルシオーネだけだった。

私が乗っていたのは2700ccのアルシオーネVXという車種である。水平対向6気筒エンジンを搭載していて、エンジンの型だけで言えばポルシェと同じ。もちろん出力などはまるで違うのだが。

水平対向6気筒エンジンはバランスがいいので、回転がスムーズで滑らかである。フィーンと気持ちよく吹け上がる。車重1300kgに対して出力150PS、トルク21.5kgなので、走り屋ではない私にとって十分な動力性能だ。

4WDだし、当時にしてはエアコン、アルミホイール、ABS、電動パワーステアリング、オートワイパー、クルーズコントロールなど装備満載。サスペンションも電子制御のエアサスペンションで、ハイトコントロールという車高調整機能があり、車高を30mm上げ下げすることができた。ライトもリトラクタブルライトだし、あれこれギミックがあるなという感じだった。

これだけ色々付いた2700ccの車が約260万円というのは、割とお買い得だったと思う。1800ccターボのVRにオプションのエアコンやアルミホイールなどを付けていくと、結局VXと同じくらいの値段になってしまうのだし、ABSやクルーズコントロールはVX専用装備だったからだ。

スペシャリティカーであってスポーツカーではないので、走りを重視した足回りではなくて乗り心地重視のはずである。ところがVXはタイヤも太いし、エアサスなのにゴツゴツした硬い乗り心地だったのだ。先に出ていた1800ccターボのVRもやはりエアサスでフワフワと柔らかい乗り心地なのに、VXはやたらガチガチだったのだ。路面の状態が悪かったりすると最悪である。だからなるべく舗装が荒れてないきれいな道を走るように心掛けていた。ろくに試乗もしないで買ったので、納車になるまでこんなに硬い乗り心地だとは知らなかった。なんであんなセッティングで発売したのか意味がわからない。

シートレイアウトは2+2の4人乗りだが、後席は非常に狭くて物を置く程度である。人が乗れないことはないが、かなり窮屈な思いをすることになる。実質2シーターのようなものだった。しかしほとんどは1人か2人で乗るので、不便を感じたことはない。私が後ろに乗るわけでもないし。

この鮮やかな赤のVXは非常に数が少なかったので、その辺を走っていると知り合いに発見されてしまうことが多く、隠密行動はなかなか難しかった。「昨日どこそこにいたでしょう」とすぐ指摘されてしまうのだ。

アルシオーネに乗ってずいぶんあちこちに行った。硬い乗り心地以外は特に不満の無い車だった。だから9年間乗り続けていたのだが、結婚を機にSUVのフォレスターに乗り換えた。

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