こうのとり、たちずさんで

テオ・アンゲロプロス監督の作品を見るのは久しぶりだ。このギリシャの監督の作品は長めで、内容もよくわからないものが多い。しかしつまらないかというと、そうでもないのである。そこがちょっと不思議だが、どれも映像美に支えられた作品であることは確かである。

以前に見た「旅芸人の記録」は約4時間、「シテール島への船出」は約2時間半。「こうのとり、たちずさんで」も約2時間半で、アンゲロプロス監督の作品としては長くない方だ。そしてやはりはっきりしたストーリー展開の映画ではなく、だから見る方も話の筋を追っていくような見方ではなく、イメージを受け取るというような感じになるかと思う。

もちろん、社会的背景やギリシャの軍事政権のことなどを勉強した上で見るとまた違った見方になるかもしれないが、一般的にはそういったギリシャについての基礎知識が無い状態で見ることが普通であると思う。

番組製作で国境を訪れたディレクターは、難民たちの中に数年前に失踪した大物政治家に似た男を発見する。その政治家の妻を呼び寄せて対面させるが…。

ヘタなコメディを見るくらいなら、巨匠のわけのわからない作品の方が余程飽きない。レベルの低いコメディはだんだんイライラして見るのが苦痛になってくるが、アンゲロプロス監督に限らずタルコフスキー監督やベルイマン監督とか、巨匠の作品は見ている者を引き込む力がとても強いので、意味不明でもずっと見ていられるのだ。また映像が美しいということも1つの理由かもしれない。

1991年製作、マルチェロ・マストロヤンニ、ジャンヌ・モロー、グレゴリー・カー主演。

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