原油価格の大幅下落によって景気が悪化する

ほんのひと月前には70ドル前後だったWTI原油価格が50ドルを割りそうなくらいに下がっている。ひと月で約30%もの下落である。世界の景気が先行き悪化するという観測を基に、原油の需要が減退すると考えられているからだ。

原油価格下落の背景は、中国の景気失速懸念が大きいようである。元々悪化傾向だった中国景気が、アメリカとの貿易問題でさらに悪化すると予測されているからなのだ。原油の大消費国である中国の景気が悪化すれば、需要が大幅に減少するので価格が下るというわけである。

原油価格が下がれば個人にとっても企業にとってもエネルギーコストが下がり、心理的に消費が増えやすくなるのだが、実はそれによって景気が良くなるとは限らない。

なぜかというと実質金利が上がってしまうからなのである。実質金利は名目金利から物価上昇率を差し引いたもの。名目金利−物価上昇率=実質金利となっている。例えば3%の金利でお金を借りたとしても、物価が3%上昇すれば実質金利はゼロになる。金利ゼロでお金が借りられるのと同じと考えられるのである。

名目金利はわれわれが普通目にする金利で、銀行で借り入れをするときなどの金利である。原油価格が下落すると物価上昇率は下がるから、上の式に当てはめて考えると実質金利が上がることになる。物価の上昇分だけ実質的には金利が下がるのだが、その物価の上昇分が減るから実質的な金利が上がってしまうことになるのだ。

実質金利が上がると投資は減る。個人消費の増加以上に投資が減少するので、景気が良くならないのである。だからひと月で30%もの原油価格の下落は、今後の景気にとっては悪材料となってしまうのだ。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。