しとやかな獣

やっぱり新藤兼人は面白い。新藤兼人脚本、川島雄三監督の「しとやかな獣(けだもの)」は、見応えのある作品である。ただ面白いだけでなく、どこか人を喰ったようなとぼけた味のある映画なのだ。

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舞台は団地の一室。ほぼここだけで話は進行する。退役軍人の父とその妻、息子と娘の4人家族。息子は勤め先の会社の金を横領し、娘は有名作家の愛人となり、それらの金で一家は優雅に暮らす。横領がバレて騒動になっても一家は平気の平左。あくまで図太く、図々しく、悪いなんてこれっぽっちも思わない。

あんな風に図々しくいられたら、どんなに楽だろうと思う。細かいことを気に病むこともない。特に父親役の伊藤雄之助は出色の出来映え。妻役の山岡久乃とともにいい味出しているのだ。

こんなブラック・ユーモアあふれる、面白い映画が日本にもちゃんとあるのである。あと、伊藤雄之助と吉本の小藪千豊の顔がよく似ている。
1962年製作、他に若尾文子、高松英郎、小沢昭一など出演。

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