ファイブ・イージー・ピーセス

あまり世間で話題に登るわけじゃないけど、妙に心に残る映画というものがある。私の場合、「ファイブ・イージー・ピーセス」がそれにあたる。多分、評論家受けは割りといいのじゃないかと思うけど、この映画が好きだという人には会ったことがない。

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はっきり言って、やるせない映画である。救いがない。見ていて楽しいわけじゃない。でもなんとなく心に残り、忘れることができないのである。主人公は痛々しいし、周りの人も幸福じゃない。見た後は重苦しい気持ちになるだけである。でもなぜかこの作品が好きなのだ。

ボビー(ジャック・ニコルソン)は工事現場で働いていて、その日暮らしのような生活である。しかし元は裕福な音楽家一家に育っていたのだ。恋人が妊娠したのを機会に実家に帰ってみたけれど、しっくりいかない。家族と彼とでは人生の意味合いがずいぶんと違ってしまっているのだ。

何のために生きているのだろうか。人生に価値はあるのか。答えを見出すことはできず、ただ空しく、息苦しく、虚ろにさまようように暮らしている。そんな姿が切ないながら共感もできる。こういったちっとも楽しくない重苦しい映画なのだけど、好きな映画の一つなのだ。

ボブ・ラフェルソン監督、1970年製作。

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