懐かしい新潟の冬の夜

学生時代は新潟で過ごした。なんでかというと、雪国で暮らしてみたかったからだ。勉学に燃えていたわけでもないし、将来どういうことをやるかという考えもなく、漠然と大学に進んだのであるからどこの大学でも良かったわけだが、一度雪国で暮らしてみたい、との思いだけで新潟大学を選んだのだ。

当時は群馬県に住んでいたので、お隣の新潟県は遠すぎずかつ豪雪県という、まさに私にうってつけの場所だった。北海道は遠すぎるし寒すぎる。青森、秋田、山形も遠くて帰省するのも大変そうだ。新潟は手頃な距離で雪国暮らしが実現できたのだった。

親は地元の群馬大学を望んでいたけれど、そうしたら実家から通うことになるのは必定。だから群馬大学だけは選択肢に絶対入らなかった。大学に行く目的は一人暮らしをすることにあるのだから、親元から通える大学では意味が無い。

大学の選択ということで思い出したが、以前勤めていた会社の上司は東北大学出身で、本当は東大を狙っていたとか言っていた。先日も新潟大学時代の友人が、実は東北大学を狙っていたと言っていた。うっかり聞き忘れたのだが、本当は別の大学に行きたかったという理由は何なのだろう。

私は雪国で暮らしてみたいというような遊び気分で大学を選ぶような人間なので、もっといい大学に行きたいという気持ちがよくわからない。実家がそんなに裕福ではなかったので私立という選択肢は無かったが、国立ならどこでも同じようなものだと思っていた。より良い大学に行きたいというのは上昇志向なのか、それともブランド指向なのか?

大学に入り、冬になって雪が降り始めるとワクワクした。ついに雪国の始まりだ。瞬く間に地面が白くなっていき、春になるまで茶色い地面は二度と見ることはない。冬の間じゅう、雪が数十センチ積もっているのである。地元の人はうんざりなのかもしれないが、関東から来た私にとってはとても新鮮で、毎日続く一面の雪景色は素敵な光景だった。

冬の夜、夜中まで起きていて本など読んでいる。とても静かだ。雪が音を吸収するのだろう。静寂な夜なのだ。ときたま通る車も、くぐもったような鋭さのない音で走って行く。そういう夜が大好きだった。今そういう状況で、静かに熱燗を飲んで物思いにふけることなどできたら最高なのにと思う。できたらもう一度、雪国の冬を過ごしてみたい。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。